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希少疾患:全国規模での迅速な希少疾患診断のための統合マルチオミクス

Nature Medicine 29, 7 doi: 10.1038/s41591-023-02401-9

重篤な希少疾患に罹患している乳幼児と小児は、臨床管理のために、迅速かつ正確な診断の機会が公平に得られるべきである。Acute Care Genomicsプログラムでは、オーストラリアの全国の病院を対象に、そこに入院している、遺伝的疾患が疑われる重篤な疾患の乳幼児や小児を持つ290家族を対象に、全ゲノム塩基配列解読を2年以上の期間実施した。結果を得るまでの平均期間は2.9日で、診断率は47%だった。また、診断が確定しなかった全患者に対して、追加のバイオインフォマティクス解析とトランスクリプトームの塩基配列解読を行った。さらに、特定の症例では、ロングリードの塩基配列解読に加えて、酵素についての臨床的に認められた解析から特別な定量的プロテオミクスまで、機能アッセイが実施された。その結果、追加で19人が診断され、全体の診断率は54%になった。診断に用いられたバリアントは、染色体の構造的異常から、スプライシングを破壊するイントロンのレトロトランスポゾンまで多岐にわたった。救命救急管理が変更された患者は、診断された患者のうち120人(77%)に上った。この中には、精密治療の情報提供、外科手術および移植の判断、緩和ケアの管理に大きな影響を受けた患者が94人(60%)存在した。我々の結果は、希少疾患のゲノム検査を適時に行ってそれが持つ性能を最大限に発揮するために、主流となっている診断方法にマルチオミクスの手法を組み入れることの臨床的有用性について、予備的な証拠を示している。

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