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アルツハイマー病:前臨床期アルツハイマー病においては、アストロサイトの反応性が、タウ病変を引き起こすアミロイドβの効果に影響している

Nature Medicine 29, 7 doi: 10.1038/s41591-023-02380-x

アルツハイマー病(AD)の病態生理を理解する上で未解決の問題は、認知障害がない(CU)アミロイドβ(Aβ)陽性者のかなりの割合で、なぜAβ下流のタウ病変が検出できず、その結果としての臨床症状の増悪がないのか、ということである。これに関してin vitro解析では、反応性アストロサイトがAβに影響を及ぼして病的なタウのリン酸化を引き起こすことが示唆されている。本論文では、3つのコホート(n = 1016)を対象としたバイオマーカー研究を行い、認知障害がない人において、Aβとタウリン酸化の関連性がアストロサイトの反応性の違いによって変化しているかどうかを検証した。その結果、アストロサイト反応性が増強している(Ast+)場合においてのみ、Aβが血漿中のリン酸化タウ量の増加と関連することが分かった。さらに、陽電子放出断層撮影(PET)によるタウの横断的および縦断的研究を行い、認知障害のないAst+の人においてのみ、Aβの蓄積に応じてADと同様にタウ病変が蓄積するパターンが見られることを明らかにした。今回の結果は、アストロサイトの反応性が、Aβをタウの初期の病的異常と結び付ける、タウ上流で起こる重要な事象であることを示唆している。この知見は、前臨床期ADの生物学的な定義や、臨床試験における認知障害のない被験者の選定に影響を及ぼすと考えられる。

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