Editorial

精密医療とがんワクチンの出会い

Nature Medicine 29, 6 doi: 10.1038/s41591-023-02432-2

がん治療用ワクチンの開発はずっと以前から行われてきたが、これまで臨床的有効性は芳しくなかった。今回、患者の腫瘍に合わせた個別化mRNAワクチンと抗PD-1モノクローナル抗体を組み合わせて使った2つの独立した研究により、黒色腫と膵臓がんで最初の成功が報告され、この分野が活気づいている。腫瘍に焦点を絞った応答を引き出すためには、正常細胞にはほとんど存在しないが免疫系が異物と認識する腫瘍関連抗原(ネオアンチゲンなど)を見つけることが必要だ。またワクチンによるT細胞増殖を促進または抑制する因子を突き止めることができれば、治療効果を高められる。合理的に設計されたmRNAワクチンと免疫療法の組み合わせで、がんを安全かつ効果的に抑制できれば、幅広い応用が可能になるだろう。ワクチンは、病気の予防と治療が可能な免疫系に対して持続的な再構成を誘発するという点がユニークである。精密ワクチンは医療に革新をもたらす次の前進となるかもしれない。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度