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肺細胞アトラス:健康な肺と病気の肺の統合的細胞アトラス

Nature Medicine 29, 6 doi: 10.1038/s41591-023-02327-2

一細胞技術はヒトの組織についての理解を一変させた。しかし大抵の場合、こうした研究で対象になっているドナーの数は限定的で、なおかつ細胞タイプの定義については一致が見られない。多くの一細胞データセットを統合すれば、これらの個々の研究の持つ制約に対処して、集団中に存在するばらつきを捉えることが可能になる。今回我々は、統合的なヒト肺細胞アトラス(HLCA)について報告する。HLCAはヒト呼吸器系の49のデータセットを組み合わせて1つのアトラスにしたもので、486人から採取した240万個以上の細胞のデータを網羅している。HLCAは、マーカー遺伝子を一致させることで注釈付けし直した共通細胞タイプを示しており、まれな細胞タイプやこれまでに報告のない細胞タイプも注釈付けされている。我々はHLCAに含まれる対象者の規模と多様性の大きさを利用して、年齢、性別、ボディマス指数などの人口統計学的共変量と関連する遺伝子モジュールや、気管支樹の遠近軸に沿って発現が変化する遺伝子モジュールを明らかにした。HLCAに新しいデータをマッピングすることで、データの迅速な注釈付けや解釈が可能となる。HLCAを疾患研究の参照情報として利用することで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や肺線維症、肺がんにおける単球由来のSPP1+線維化促進性マクロファージなど、多くの肺疾患に共通した細胞状態が見つかった。このように、HLCAはヒト細胞アトラス内での大規模なクロスデータセット器官/臓器アトラスの開発と活用に関する一例となる。

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