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前立腺がん:限局性前立腺がんに対するネオアジュバントとしてのエノブリツズマブ ― 単群第2相試験

Nature Medicine 29, 4 doi: 10.1038/s41591-023-02284-w

B7ホモログ3(B7-H3、CD276)は腫瘍関連抗原の1つで、免疫チェックポイントであると考えられる。B7-H3は前立腺がん(PCa)で高発現しており、早期再発や転移に関連している。エノブリツズマブはヒト化Fc改変型B7-H3標的抗体で、抗体依存性細胞傷害を仲介する。多数のバイオマーカーを用いた今回の第2相ネオアジュバント試験では、手術可能な、中リスクから高リスクの限局性前立腺がんである生物学的男性の患者32名に対して、前立腺切除の術前に投与した場合のエノブリツズマブの安全性、抗腫瘍活性、免疫原性を評価した。ここで、本試験の2つの主要評価項目(全ての検証が必要)は、安全性が認められることと、術後1年の前立腺特異抗原(PSA)値が検出不能であること(PSA0)とした。そして本試験の目的を、PSA0の推定値を妥当な精度で得ることとした。主要評価項目のうち安全性に関しては達成され、注目すべき外科的あるいは内科的な予期せぬ合併症、あるいは外科手術の延期は皆無であった。全体として、患者の12%にグレード3の有害事象が観察され、グレード4の有害事象は生じなかった。もう1つの主要評価項目である、前立腺切除術後1年の時点でのPSA0の割合は66%(95%信頼区間47–81%)であった。前立腺がんにおけるB7-H3標的免疫療法は実行可能で一般的に安全であり、予備試験のデータはその臨床応用の可能性を示唆している。本研究は、B7-H3が前立腺がんに対する治療法開発のための理にかなった標的であることを実証するものであり、より大規模な試験が計画されている。ClinicalTrials.govのID:NCT02923180。

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