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ディスバイオーシス:重症疾患における微生物相と免疫のメタシステムのディスバイオーシスは院内感染と関連する

Nature Medicine 29, 4 doi: 10.1038/s41591-023-02243-5

集中治療室の重症患者では腸内微生物相の大規模な変化が起こり、これは院内感染リスクの高さや、機序の不明な有害転帰と関連している。マウスでの多くのデータとヒトでの限られたデータは、腸内微生物相が全身的な免疫恒常性の維持に関与する可能性や、腸内のディスバイオーシスが感染に対する免疫防御の異常を誘導する可能性を示唆している。今回我々は、直腸スワブ中の糞便微生物相の動態と、重症患者の前向き縦断的コホート研究における全身性免疫と炎症応答の単一細胞プロファイリングを統合したシステムレベルの解析を行い、腸内微生物相と全身性免疫が統合的メタシステムとして機能し、腸内のディスバイオーシスは宿主防御の障害と院内感染頻度の増加につながることを示す。直腸スワブの16s rRNA遺伝子塩基配列解読による縦断的な微生物相の解析と、マスサイトメトリーを使った血液の単一細胞プロファイリングにより、急性重症疾患での微生物相と免疫動態が強く相互接続すること、また、腸内細菌科細菌の豊富さ、骨髄細胞応答の調節異常、全身性炎症の増幅が支配的であるのに対し、宿主防御の適応機構への影響は小さいことが分かった。腸内での腸内細菌科細菌の増加は、好中球の機能低下や未成熟といった自然免疫の抗微生物エフェクター応答の悪化と結び付いており、さまざまな細菌性や真菌性の病原体による感染リスクの上昇と関連していた。まとめると、我々の結果は、腸内微生物相と全身性の免疫応答の間で相互接続しているメタシステムのディスバイオーシスが、重症疾患における宿主防御の障害と院内感染に対する感受性を引き起こす可能性を示唆している。

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