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多発性骨髄腫:遺伝学的に不均一な多発性骨髄腫で免疫療法の転帰と免疫回避機構を予測するための前臨床モデル

Nature Medicine 29, 3 doi: 10.1038/s41591-022-02178-3

多発性骨髄腫(MM)の遺伝学的不均一性を反映している前臨床モデルがこれまで存在しないことが、治療法発見の進歩を妨げてきた。この制限を逃れるために、我々はMMで見られる8つの異常(NF-κB、KRAS、MYC、TP53、BCL2、サイクリンD1、MMSET/NSD2、c-MAF)を持ち、それらを組み合わせてBリンパ球で活性化するように改変されたマウスでT細胞駆動型の免疫感作を行い、MMの発症についてスクリーニングした。15の遺伝的に多様なモデルが、MMの病態を実現する骨髄(BM)腫瘍を発症した。約500匹のマウスと約1000人の患者の統合解析から、遺伝的に不均一なMM全体にわたって、前駆状態から進行するまでの時間を加速する共通のMAPK-MYC遺伝的経路が明らかになった。進行への時間はMYCに依存していて免疫回避機構を調整し、BM微小環境にさまざまなリモデリングを起こす。MYCが駆動し急速に進行するMMでは、活性化/疲弊したCD8+ T細胞が多数存在し、免疫抑制性の制御性T(Treg)細胞は減少していたが、進行が遅いMMでの後期に起こるMYC獲得は、CD8+ T細胞浸潤の低下と、より多数のTreg細胞に関連していた。単一細胞トランスクリプトミクスと機能解析から、Treg細胞に対するCD8+ T細胞の比率が高いことが、免疫チェックポイント阻害(ICB)への応答の予測因子となることが明らかになった。一連の臨床研究では、CD8+ T細胞/Treg細胞の比が高いことが、未治療のくすぶり型MMでの早期進行の基盤であり、またMMと新たに診断された患者でのレナリドミド/デキサメタゾン療法下での早期再発と相関していた。ICB不応性MMモデルでは、CD8+ T細胞の細胞傷害性の増強あるいはTreg細胞の減少は免疫療法抵抗性を減弱させ、長期的なMM制御が可能になった。我々の実験モデルにより、MMの遺伝学的形質および免疫学的形質と前臨床での治療応答を相関させることが可能になり、このことは次世代の免疫療法試験に役立つだろう。

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