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鎌状赤血球症:鎌状赤血球症に対する遺伝子治療後の造血幹細胞のクローン選択

Nature Medicine 29, 12 doi: 10.1038/s41591-023-02636-6

遺伝子治療(GT)は、鎌状赤血球症(SCD)の患者に治癒が望める可能性のある治療選択肢である。しかし、GT臨床試験では骨髄性悪性腫瘍が発症しているので、いくつかの発症機序が想定されてはいるものの、懸念材料となっている。本論文では、SCD患者6人の造血幹細胞(HSC)について、GT前後の複数の時点において全ゲノム塩基配列解読を行うことで追跡し、遺伝子改変HSCおよび非改変HSCの体細胞変異をマッピングし、クローンの全体像を明らかにした。GT前のゲノムの系統解析では、非常に多数のクローンが存在しており、細胞当たりの変異量は、全ての患者ではないが、一部の患者で増加していた。GT後では、遺伝子改変細胞でも非改変細胞でもクローンの拡大は見られなかった。しかし、遺伝子改変細胞と非改変細胞の両方で、骨髄性腫瘍やクローン性造血に関連する可能性の高いドライバー変異(特にDNMT3AEZH2が変異しているクローン)の頻度上昇が観察されたことから、GT期間中に変異型クローンの正の選択があることが示唆された。本研究は、SCDにおけるHSCのクローン動態と、GT後の変異の全体像を明らかにするものであり、ドライバー変異を既に持っている一部のHSCの適応度が上昇することを浮き彫りにしている。今後は、変異型クローンについて、骨髄性腫瘍に関連するクローン拡大の一因となるかなど、長期的な運命を明らかにする必要がある。

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