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感染症:A型インフルエンザウイルスとSARS-CoV-2のウイルスRNAの保存された重要な二次構造を標的とするプログラム可能な抗ウイルス薬

Nature Medicine 28, 9 doi: 10.1038/s41591-022-01908-x

A型インフルエンザウイルス(IAV)で頻繁にみられる遺伝的変化は、ワクチン戦略にとっての難問であり、一般に使われている薬剤に対する抵抗性を生じさせる。我々は、IAVゲノム内で治療標的とされた際の応答によって変異に対する制約が他より大きいと予測された、保存された重要なRNA二次構造を明らかにすることを試みた。そして、in vitroでのパッケージングやin vivoでの病的状態に関わり、既知の全てのIAV分離株で保存されている1つのRNA構造(PSL2:packaging stem-loop 2)が見つかり、遺伝学的な検証を行った。マウスに致死量のIAVを接種した3日後あるいは接種する14日前に、PSL2を標的とするロック核酸(LNA)を投与すると、マウスの100%が生存した、このLNA投与は、致死量の10倍のIAV接種という再チャレンジに対する強力な免疫の発生につながり、抵抗性によるIAV選択は起こらず、ノイラミニダーゼ阻害剤抵抗性ウイルスに対して完全な有効性を保持していた。類似の手法を用いてSARS-CoV-2を標的としたところ、このウイルスゲノムの高度に保存されたRNA構造に特異的なLNAの予防的投与によってハムスターでのSARS-CoV-2 USA_WA1/2020変異株の効率のよい伝播が防止された。これらの知見は、我々が「プログラム可能な抗ウイルス薬」と名付けた仲介物を経る過程を介するこの手法が、対象となるあらゆるウイルスに適用できる可能性を明確に示しており、これは抗ウイルス予防薬やウイルス曝露後の治療に関わってくると考えられる。

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