Editorial

がん研究の未来

Nature Medicine 28, 4 doi: 10.1038/s41591-022-01809-z

近年がん治療の研究は加速しており、腫瘍の免疫学と生物学での新たな知見が、AI、ナノツール、遺伝子工学、塩基配列決定などの進歩と合わさって、予防、診断、個別化治療に新たな展望が開けている。2022年のワールドキャンサーデーのテーマは「Close the care gap(がん医療のギャップを埋めよう)」だった。これには早期発見が重要で、個別化されたリスクに基づくスクリーニングがカギを握る。小児がんは薬の開発や承認で成人がんに大きく後れを取っており、その一方、成人がんでは多くの新しい治療法が開発されてもなかなか臨床使用へと進まないのが現状である。がん研究で最も顕著なギャップは、おそらく高所得国と低・中所得国の間のギャップだろう。低・中所得国では、がん研究は地域の事情に関連している必要があり、がんの早期発見に注力すべきだ。また、現在も進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック(世界的大流行)にヘルスケアシステムや研究基盤が適応していくことにより、がんの研究環境には今後、大きく変わる機会がありそうだ。

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