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凍結保存技術:ガラス化による膵島凍結保存は、移植のための高い生存能、機能、回収率、臨床拡張性を達成する

Nature Medicine 28, 4 doi: 10.1038/s41591-022-01718-1

膵島移植は糖尿病を治癒することが可能だが、十分な量の高品質の膵島が利用可能でなければならない。凍結保存は、ドナー膵島の品質管理されたバンク構築と貯留を可能にすることで、膵島のサプライチェーンという難問を解決する可能性がある。しかし、高い回収率、生存能、機能、スケーラビリティーを同時に可能にする必要があるため、この目的では凍結保存は成功していない。今回我々は、凍結保護剤(CPA)の組成、CPAの添加と除去の条件、ガラス化・復温(VR)の方法を包括的に最適化することで、マウス、ブタ、ヒト、ヒト幹細胞(SC)由来ベータ細胞(SCベータ)の膵島で、この目的を達成した。VR後の膵島の生存能は、対照群と比較して、マウス膵島では90.5%、SCベータ膵島では92.1%、ブタ膵島では87.2%、ヒト膵島では87.4%であり、少なくとも9か月間の極低温保存で変化は見られなかった。VR膵島は巨視的、微視的、超微細構造的に正常な形態を示した。ミトコンドリア膜電位とアデノシン三リン酸(ATP)レベルはわずかに低下していたが、ATPを産生する酸素消費速度(OCR)などの細胞呼吸の他の全ての測定値は変化していなかった。またVR膵島は、in vitroとin vivoで正常なグルコース刺激インスリン分泌(GSIS)機能を持っていた。ブタとSCベータの膵島は、異種移植モデルでインスリンを産生し、マウスの膵島は限界量膵島同種移植モデルの試験で、92%のレシピエントで移植後24~48時間以内に糖尿病を治癒した。血糖コントロールは150日間にわたって良好だった。まとめると、我々の方法では、95%超の回収率で2500個の膵島を処理し、解凍後の生存率は89%を超えていて、スループットを高めるための拡張を容易に行うことができる。これらの結果は、凍結保存法を用いて、糖尿病治癒の移植転帰を改善するために必要とされる膵島の供給が可能になったことを示唆している。

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