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人口統計:2020年にがんが原因の死亡で母親を亡くした子供の世界全体および地域レベルでの推定数

Nature Medicine 28, 12 doi: 10.1038/s41591-022-02109-2

女性はがんによる若齢での死亡が不均衡に多く、その結果生じる「母親を亡くした子供」は、健康や教育に関して一生を通じて不利益を被ることになるが、こういう子供に関する世界レベルでの推定値は存在しない。我々は、2020年に母親ががんで亡くなったために「母親を亡くした子供」になった子の数を、世界185カ国に関して、がん関連死の原因別に推定した。国別、がん種別、年齢別の女性がん関連死者数(GLOBOCANの推計に基づく)、個々の女性の死亡時での18歳未満の子供の推定数(出生データは出生コホートに関する国連の世界人口予測から得られた)とを掛け合わせることで、子どもの死亡率と出産回数とがんリスクの間の関連が説明された。このような子供の数は全世界で104万7000人にのぼり、これらの半数以上が、乳がん(25万8000、25%)、子宮頸がん(21万、20%)および上部消化管がん(13万6000、13%)に起因する母親の死亡によるものであり、死亡のほとんどがアジア(48%。内訳はインド15%、中国10%、残りのアジア23%)と、アフリカ(35%)で起こった。全世界では、子ども10万人当たり40人の新たな「母親を亡くした子供」ががんによって生じており、この数値は人間開発指数が高いほど減少傾向にあった(マラウイ共和国の121人からマルタ共和国の15人の範囲にある)。2020年半ばには、がんが原因で「母親を亡くした子供」の数は700万人と推定された。世界保健機関の子宮頸がんおよび乳がんに関するイニシアチブの実施を加速させることで、数百万人の女性のがんによる予防可能な死亡が回避されるだけでなく、このような死亡に関連する、見落とされることの多い世代間の影響も避けられる可能性がある。

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