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がん治療:全身のCD8+ T細胞をがん免疫療法の前および治療中に可視化する ─ 第1/2相試験

Nature Medicine 28, 12 doi: 10.1038/s41591-022-02084-8

免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は、CD8+ T細胞を介する免疫を再活性化することによって、がん治療に大きな変革をもたらした。しかし、ICIに対する応答のバイオマーカー候補であるCD8+ T細胞の全身での分布についてはほとんど調べられていない。我々は、ICI治療を開始前と開始後約30日経った固形腫瘍患者で、ジルコニウム89で標識したCD8特異的な片腕抗体である陽電子放出断層撮影トレーサーの89ZED88082Aの安全性、イメージング線量とタイミング、薬物動態学的性質や免疫原性について評価した(NCT04029181)。トレーサー関連の副作用は起こらなかった。10 mgの抗体を用いた陽電子放出断層撮影によるイメージングでは、正常リンパ組織での取り込みと全身の腫瘍性病変部位での89ZED88082Aの取り込みが明らかになった。腫瘍性病変部位での取り込みは、トレーサー注射後2日間にわたって患者体内および患者間で変動が見られた〔n = 38、患者の最大基準取り込み値の中央値(SUVmax)5.2、IQI 4.0–7.4〕。より高いSUVmaxは、ミスマッチ修復欠損およびより長い全生存期間と関連していた。取り込みは「desert」と呼ばれる免疫表現型よりも、「stromal」や「inflamed」と呼ばれる免疫表現型を示す病変部異で高かった。組織での放射能は免疫組織化学的に確認されたCD8発現領域に局在していた。治療中の患者で再度イメージングを行うと、ベースラインと比べた場合、腫瘍のトレーサーの取り込みの平均値(幾何平均)は変化がなかったが、個々の病変部位は腫瘍の応答とは無関係に多様な変化を示した。画像化データは、患者体内や患者間でのCD8+ T細胞の分布や薬理学的動態が大きく異なっていることを示唆している。89ZED88082AはICIを使用する状況下でのCD8+ T細胞の複雑な動態の特徴を調べることを可能にし、免疫療法に情報をもたらすだろう。

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