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CAR T療法:KIRを用いた抑制性CARはCAR-NK細胞トロゴサイトーシスを介する細胞の同士討ちと腫瘍回避に打ち勝つ

Nature Medicine 28, 10 doi: 10.1038/s41591-022-02003-x

トロゴサイトーシスは、標的細胞からエフェクター細胞へ細胞表面の物質を移動させる能動的な過程である。今回我々は、複数のin vivo腫瘍モデルと臨床データを用いて、ナチュラルキラー(NK)細胞でのキメラ抗原受容体(CAR)の活性化が、腫瘍からNK細胞へのCARコグネイト抗原の移動を促進することを明らかにした。この移動により(1)腫瘍抗原密度の低下が起こり、その結果としてCAR-NK細胞の標的への結合能が損なわれ、(2)自己認識とCARを介した持続的な結合が誘導されて、トロゴサイトーシスによって生じた抗原発現NK細胞(NKTROG+)の同士討ち(fratricide)とNK細胞の応答性低下が生じる。この現象は、コグネイト腫瘍抗原に対するCARの活性化とNK自己認識阻害CARの両方を取り込んだ二重CARシステムによって相殺可能であり、このシステムはTROG+姉妹細胞との結合時に「don’t kill me(私を殺さないで)」シグナルをNK細胞へ移動させる。このシステムは、腫瘍抗原に対するCARシグナル伝達の活性化は残しながら、トロゴサイトーシス性抗原を介した細胞の同士討ちを阻害することで、CAR-NK細胞活性を増強する。

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