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mRNAワクチンのCOVID-19での成功の後を追って、他の病気に対するmRNAワクチンの開発も勢いを増している

Nature Medicine 27, 6 doi: 10.1038/s41591-021-01393-8

mRNAワクチンは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と闘うための重要な手段として脚光を浴びているが、この技術は本来、がんなどの他の疾患の治療のために開発されたものだ。COVID-19に対するさまざまな種類のワクチンが臨床試験に入っていた頃、まだ有効性が証明されていないmRNAワクチンがスターになると予想した専門家はほんの少しだった。だがそれから10か月もたたないうちに、mRNAワクチンは、最初に承認された、そして最も有効性の高いワクチンとなったのである。mRNAワクチンが承認されたのは今回が初めてだが、開発は30年以上前から行われており、その過程はなかなか多難なものだった。mRNAは改変がしやすく、作製も容易で、ワクチンに使用しやすいといえるが、炎症を引き起こしやすい、容易に分解される、細胞内への送達が難しい、タンパク質への翻訳効率が低いなどの基本的な問題も多い。しかし、これらの問題は現在、着々と解決されつつある。mRNAワクチンの特徴を活かして、作製が試みられている感染症用のワクチンには、進化の速いインフルエンザウイルスや、感染者数が多く、根本的な治療法がまだないデングウイルスに対するものなどがあるが、がんの変異を標的とするワクチンも、固形腫瘍を標的とするだけでなく、腫瘍微小環境の修飾も含めた開発が急がれていて、大きな期待がかけられている。

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