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PTSD:重度のPTSDに対するMDMA支援療法:無作為化二重盲検プラセボ対照第3相臨床試験

Nature Medicine 27, 6 doi: 10.1038/s41591-021-01336-3

心的外傷後ストレス障害(PTSD)は重要な公衆衛生上の問題となっており、現在利用可能な治療法の効果は大きいものではない。本論文では、重度のPTSD患者の治療に3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)支援療法を使用する際の有効性と安全性を調べる目的で行った無作為化二重盲検プラセボ対照多施設第3相臨床試験(NCT03537014)で得られた知見を報告する。参加者には、解離、うつ病、アルコールや物質使用障害の病歴、小児期外傷など、一般的な併存疾患を持つ患者が含まれる。参加者(n = 90)は、精神科の治療薬のウォッシュアウト後、1:1に無作為的に分けられ、MDMAもしくはプラセボを用いるマニュアルに沿った治療を受けた。治療は3回の準備セッションと9回の統合セッションを組み合わせて行われた。DSM-5のPTSD臨床診断面接尺度(Clinician-Administered PTSD Scale for DSM-5)で測定されたPTSD症状(CAPS-5、主要評価項目)、およびシーハン障害尺度(SDS)で測定された機能障害(副次評価項目)が、ベースライン時と最後の実験セッション後2か月の時点で評価された。有害事象と自死傾向は、試験期間を通じて追跡された。MDMAは、プラセボに比べるとCAPS-5スコアを有意かつロバストに低下させ(P < 0.0001、d = 0.91)、またSDS合計スコアも有意に低下させた(P = 0.0116、d = 0.43)。治療を完了した参加者のCAPS-5スコアの平均変化は、MDMA群で−24.4(s.d. 11.6)、プラセボ群で−13.9(s.d. 11.5)であった。MDMAは、薬剤乱用の可能性、自死傾向あるいはQT延長という有害事象は誘導しなかった。これらのデータは、重度のPTSD患者でMDMA支援療法は、効果のないプラセボによるマニュアルに沿った治療に比べて非常に高い有効性を示し、また、併存疾患のある患者でも安全で耐容性は良好である。我々は、MDMA支援療法が迅速な臨床評価を行うに値する画期的治療法として有望であると考えている。

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