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チクングニア熱:チクングニアウイルスに対する中和活性を持つモノクローナル抗体をコードし、脂質でカプセル化されたmRNAの第1相試験

Nature Medicine 27, 12 doi: 10.1038/s41591-021-01573-6

チクングニアウイルス(CHIKV)感染は、発熱、発疹、関節痛を特徴とする急性疾患を引き起こし、患者の最大で50%ではこの症状が重篤な慢性関節炎に進行する。さらに、CHIKVの感染は、乳幼児や免疫不全患者では致命的となることがあり、承認された治療法や予防法はない。今回の、2019年1月から2020年6月にかけて実施されたFIH(first-in-human)無作為化プラセボ対照概念実証第1相試験では、mRNA-1944の安全性と薬効薬理の評価が行われた(NCT03829384)。mRNA-1944は、CHIKV特異的モノクローナル中和抗体CHKV-24の重鎖と軽鎖をコードするメッセンジャーRNAを、脂質ナノ粒子にカプセル化したものである。主要評価項目は、18~50歳の健康な参加者に静脈内注入により投与したmRNA-1944の漸増用量の安全性と耐容性の評価とした。副次評価項目には、CHKV-24免疫グロブリンの重鎖と軽鎖をコードするmRNAとイオン化アミノ脂質構成成分の薬物動態の決定に加えて、CHKV-24免疫グロブリンG(IgG)をコードするmRNAの血清濃度によって評価されたmRNA-1944の薬力学的性質、イオン化アミノ脂質の血漿中濃度、CHKV-24 IgGの血清濃度が含まれている。本論文では、38人の健康な参加者の事前に指定した中間解析の結果を報告する。この試験では、mRNA-1944またはプラセボを0.1、0.3、0.6 mg kg−1で静脈内単回投与、もしくは0.3 mg kg−1で1週間空けて2回投与した。単回静脈内注入の12、24、48時間後には、中和活性を持つCHKV-24 IgGの用量依存的なレベルが、各用量について治療効果がある濃度(≥ 1 μg ml−1)と予測された力価で観察され、0.3 mg kg−1と0.6 mg kg−1では16週間以上持続した(平均t1/2は約69日)。0.3 mg kg−1の1回目投与から1週間後の2回目投与では、CHKV-24 IgGレベルは1.8倍に上昇した。有害事象の重症度は軽度から中等度であり、2回目のmRNA-1944投与で悪化せず、深刻なものはなかった。mRNA-1944は、我々の知る限り、臨床試験でin vivoでの発現とex vivoでの検出可能な中和活性が示された最初のmRNAコード化モノクローナル抗体であり、CHIKV感染に対する新たな治療選択肢となる可能性がある。CHIKV感染の治療に対する臨床試験でのmRNA-1944の治療薬候補としての使用の評価は、今後さらに行われるべきである。

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