Letter

心疾患代謝:褐色脂肪組織は心血管代謝の健康と関連している

Nature Medicine 27, 1 doi: 10.1038/s41591-020-1126-7

白色脂肪は余剰なエネルギーを蓄えるが、褐色脂肪とベージュ脂肪は熱を発生し、エネルギーを熱として放散する。マウスモデルでは、熱産生脂肪組織はグルコースと脂質の恒常性を顕著に改善するが、ヒトで褐色脂肪組織(BAT)が代謝疾患や心血管疾患にどの程度の影響を及ぼすかは分かっていない。本論文では、5万2487人の患者について行った18F-フルオロデオキシグルコースを用いた陽電子放出断層撮影(PET)–コンピューター断層撮影(CT)のスキャン画像13万4529点をBATの有無によって後ろ向きに分類し、傾向スコアマッチング法を用いて研究コホートを組み立てた。この研究対象集団のスキャンは、当初はがんの診断や治療、サーベイランスに関係する兆候を調べるために、事前の刺激なしで行われたものである。BATを有する患者は心血管代謝疾患の有病率が低く、また、BATの存在は、他とは無関係に2型糖尿病、脂質異常症、冠動脈疾患、脳血管疾患、鬱血性心不全および高血圧のオッズが低いことと相関していた。これらの知見は、血糖、トリグリセリド、高密度リポタンパク質の値の改善によって裏付けられた。BATの有益な影響は、過体重や肥満の患者でより顕著であり、BATが肥満の有害な影響を軽減する役割を担っている可能性が示された。まとめると、我々の知見は心血管代謝の健康促進にBATが果たしていると考えられる役割を明らかにしている。

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