Editorial

2021年:WHOにとっての新たな年

Nature Medicine 27, 1 doi: 10.1038/s41591-020-01213-5

米国のバイデン新大統領は、就任初日の1月20日にWHOからの脱退を撤回する大統領令に署名した。この脱退は、トランプ前大統領がWHOの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する対応やその中国寄りの姿勢を批判して通告したものである。2020年5月にはCOVID-19パンデミック(世界的大流行)に対処する世界的取り組みを主導する中で資金不足回避に向け、新たな資金源確保のためのWHO財団の新設が発表されているが、もし米国の脱退が撤回されなければ、資金不足の加速、科学者の交流の中断など、WHOはさまざまな障害に取り囲まれて立ち往生したはずだ。

世界第1位の資金拠出国で資金の80%近くを拠出している米国との絆が新たに結ばれたことで、財政が強化されたWHOは、COVID-19パンデミックによって既存のプログラムが被った大きな損害を修復していくことが可能になるだろう。しかし、2021年はWHOにさらなる難問をもたらすと思われる。WHOは、財政面の安全性を確保しながら、結核、マラリアの根絶という懸案事項に加えて、COVID-19パンデミックの収束という新たな難問に取り組まなくてはならない。そして、国際保健分野でのその役割を明確にし、決定や基準の客観性への信頼を取り戻し、政策課題の提唱や支援を積極的に行い、参加国間の協力を推進して、人類の健康を改善するという目標も達成しなくてはならないのだ。国連は、2021年を平和と信頼の国際年と命名した。この精神にのっとって、WHOは陣頭に立って国際協力を進め、これから直面するさらなる難問に取り組むことを、我々は期待している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度