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アルツハイマー病:タウ分子の多様性は臨床で見られるアルツハイマー病の不均一性の一因である

Nature Medicine 26, 8 doi: 10.1038/s41591-020-0938-9

アルツハイマー病(AD)は、軽快することがない進行性の認知障害を引き起こすが、その経過は不均一であり、認知機能低下の速度には大きな幅がある。大脳皮質全体にわたるタウ凝集体(神経原繊維変化)の広がりは、症状の重篤さと対応している。我々は、伝播するタウタンパク質の特性に個人差があるとすれば、タウ拡散の速度論的性質がばらつくかもしれないと考えた。そして、生化学的解析と生物物理学的解析、質量分析、細胞と動物の両方での生物活性アッセイを行い、AD患者32人でのタウの特性を解析した。その結果、可溶性オリゴマーでシード活性を持つタウの過剰リン酸化型分子種に、患者間で顕著な不均一性があることが分かった。タウのシード活性は臨床での病状の悪性度と相関していて、翻訳後修飾(PTM)部位の一部は、シード活性の増強と臨床転帰の悪化の両方と関連しているように見える。これらのデータは、「典型的」なADの患者であっても、タウの生化学的特性は患者ごとに異なる可能性を示唆している。また、これらのデータは、ADの患者は、がん患者と同じように、他の点では共通の表現型を持つ分子ドライバーを複数持っている可能性と一致するものであり、ADの臨床的な進行を遅らせるための個別化治療法が有望である可能性を明確に示している。

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