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腸内微生物相:ヒトの腸マイクロバイオームと栄養吸収に対する低栄養とバンコマイシン経口投与の影響

Nature Medicine 26, 4 doi: 10.1038/s41591-020-0801-z

栄養吸収に対するマイクロバイオームの影響について、ヒトで得られた直接的な証拠はまだない。我々は、腸マイクロバイオームと栄養吸収を変化させると考えられる2つの介入法を用いて、長期入院患者で拡張研究を行った。どちらの方法でも、栄養吸収の直接的な代理値である糞便カロリーの減少が計測された。第I相は食餌への無作為化クロスオーバー介入であり、全ての参加者が無作為な順番で3日間の過食と減食を経験した。第II相では、バンコマイシン経口投与とそれにマッチするプラセボを使った無作為化二重盲検のプラセボ対照薬理学的介入が行われた(NCT02037295)。登録された27人のボランティア(男性17人と女性10人、年齢35.1 ± 7.3、BMI 32.3 ± 8.0)は、耐糖能障害と肥満を除けば健康であり、25人が試験の全行程を完了した。主要評価項目は、糞便カロリー減少への食餌と薬理学的介入の影響である。カロリー摂取に占める割合として表される糞便カロリーは、過食と減食を比べれば減食の方で増加し、バンコマイシン経口投与中には増加すると、我々は仮定した。どちらの介入方法も主要評価項目を満たしており、より大きな糞便カロリー喪失が見られたのは、過食より減食の場合であり、プラセボ投与よりバンコマイシン投与の場合であった。重要な副次的評価項目は、アンプリコン塩基配列解読とメタゲノミクスによって実証された腸微生物群集構造の変化の評価である。減食の場合と過食の場合を比べると、腸微生物群集構造はほとんど変動しなかったが、バンコマイシン経口投与では群集構造にずっと大規模な変化が起こり、多様性が低下することが分かった。Akkermansia muciniphilaの増加は両方の介入に共通して見られ、より大きな糞便カロリー減少につながった。以上の結果は、栄養吸収は環境撹乱に感受性であることを示していて、食餌エネルギーの取り込みに腸マイクロバイオームが果たすと考えられる因果的役割を実証する前臨床モデルのトランスレーショナル研究への関連を裏付けている。

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