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遺伝子治療:ヒト造血幹細胞の治療を目的とした塩基編集

Nature Medicine 26, 4 doi: 10.1038/s41591-020-0790-y

プログラム可能なDNA結合タンパク質と連結したヌクレオチドデアミナーゼによる塩基編集は、血液疾患を永続的に治癒させる有望な手法だが、生着中の造血幹細胞(HSC)に適用できるかどうかはまだ調べられていない。本研究では、A3A(N57Q)-BE3塩基エディターを精製し、ヒト末梢血に誘導されたCD34+造血幹・前駆細胞(HSPC)へリボ核タンパク質(RNP)のエレクトロポレーションを行った。BCL11A赤血球エンハンサーの+58のシトシン塩基でのオンターゲット編集が高頻度で起こり、インデルはほとんど見られなかった。塩基編集後あるいはヌクレアーゼ編集後の赤血球子孫細胞での胎児ヘモグロビン(HbF)の誘導は同程度だった。BCL11Aエンハンサーの治療を目的とした一塩基編集により、鎌状赤血球症の患者に由来するHSPCの赤血球子孫細胞では鎌状化が防止され、βサラセミア患者由来HSPCの赤血球子孫細胞ではグロビン鎖の不均衡が改善された。さらに、BCL11A赤血球エンハンサーの破壊とHBB−28A>Gプロモーター変異の修正を組み合わせることで、効率的なマルチプレックス編集が達成された。さらに、一次および二次のレシピエント動物で評価されたように、塩基編集により、多細胞系統を再構築し自己複製するヒトHSCが高い頻度で産生され、その結果in vivoでHbFが強力に誘導された。まとめるとこれらの結果は、ヒトHSPCのRNP塩基編集が、HSCを標的とした治療用ゲノム修飾のためのヌクレアーゼ編集の実行可能な代替手段である可能性を実証している。

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