Year in Review

2020年を振り返る

Nature Medicine 26, 12 doi: 10.1038/s41591-020-01147-y

Nature Medicine の年末特集では、例年と同じく、2020年に各分野で注目を集めた研究を選び出し、紹介するのに加えて、今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の研究を別枠で取り上げ、その進展をまとめている。

2020年は、複数の新しい治療法が成功し、目覚ましい成果を上げたことと、多くの研究者が社会正義の実現に向けた運動に関わるようになったことが、特徴といえる。「Notable Advances 2020」ではこのような研究を主に取り上げている。医学でのAIの使用は特に関心を集め、臨床試験に導入する際の透明性や再現性に関するガイドラインが設定される一方で、診断用アルゴリズムの開発が進展した。症状が現れる前の早期のがんを発見するための検査法、有望なKRAS阻害剤の発見などのがんの治療法の進歩、RNAを用いる治療法の開発から治験への移行など、がん治療の研究の進展は目覚ましかった。公衆衛生分野では、世界保健機関(WHO)がアフリカ大陸での野生型ポリオウイルス根絶を宣言した。また、2020年5月の白人警察官による黒人男性の殺害事件を受けて、黒人に対するこうした暴力への抗議のデモが全米に広がり、科学研究者も多数が参加した。こうした動きを受けて、黒人研究者の認知度や待遇についても改めて論じられるようになったことは、画期的変化といえる。

今年3月、WHOはCOVID-19を引き起こす重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)はパンデミック(世界的大流行)に至っていると宣言した。「Notable Advances in understanding COVID-19 2020」では、このパンデミックを受けて集中的に行われた研究の中から、この新型疾患の臨床症状の総括、接触感染の広がり、流行の抑制を難しくする無症状感染、インターフェロンなどのリスク因子や有効な治療薬、ワクチンの開発や治験の結果などについて論じ、注目を集めた論文が選ばれている。

2020 Year in Review

目次へ戻る

プライバシーマーク制度