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神経変性疾患:AAV9の脊髄軟膜下送達は広範囲にわたる遺伝子サイレンシングを可能にし、ALSでの運動ニューロン変性を遮断する

Nature Medicine 26, 1 doi: 10.1038/s41591-019-0674-1

ウイルスによって送達されるshRNAを用いた遺伝子サイレンシングは、遺伝性神経変性疾患の有望な治療手段と考えられている。我々は軟膜下技術を開発し、それによってアデノ随伴ウイルス(AAV)を成獣の頸髄、胸髄、腰髄に加えて脳の運動中枢全体にわたって送達することに成功した。家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)を引き起こす変異SOD1を発現しているマウスで、発症直前に頸髄と腰髄レベルで行った単回の注射では、脊髄のα運動ニューロンと筋肉への神経支配のほぼ完全な保持を含めて、運動ニューロン病の長期にわたる抑制が生じた。疾患発症後の投与は、疾患の進行とα運動ニューロンのさらなる変性を強力に遮断する。新たに設計した装置を用いたブタ成獣もしくは非ヒト霊長類成獣でのAAV9の軟膜下単回注射では、頸髄の白質と灰白質、脳の運動中枢全体に均一な送達が見られた。従って、成獣での脊髄軟膜下送達は、脊髄および上脊髄性運動中枢全体にわたるAAVを介した遺伝子送達に非常に効果的な方法といえる。

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