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遺伝子治療:前処置をしていないファンコニ貧血患者で成功した遺伝子修正造血幹細胞の生着

Nature Medicine 25, 9 doi: 10.1038/s41591-019-0550-z

ファンコニ貧血(FA)遺伝子はこれまでに22個が発見されており、ファンコニ貧血はこれらのFA遺伝子のいずれかに生じた変異によって引き起こされるDNA修復症候群である。FANCAの変異は、全世界のFA症例の60%以上の原因である。臨床的には、FAは先天性異常やがんの素因と関連する。しかし、FAの主要な病理学的特徴は骨髄不全であり、FA患者の70~80%で生後10年間に明らかになる。今回の臨床研究(ClinicalTrials.gov, NCT03157804;欧州臨床試験データベース2011-006100-12)では、前処置なしのFAサブタイプAの患者で、レンチウイルスを用いた造血遺伝子治療によって遺伝子修正を行った造血幹細胞(HSC)の生着と増殖優位性が再現よく付与されることが実証された。挿入部位の解析によって、修正したHSCの多能性が明らかになり、このような細胞の再増殖優位性は治療用プロウイルスの遺伝毒性の組み込みが原因ではないことが判明した。血液細胞と骨髄細胞の表現型修正が起こったことは、造血前駆細胞とTリンパ球のDNA架橋剤に対する抵抗性の獲得によって示された。さらに、遺伝子標識化が最高レベルの患者では、骨髄不全進行の停止が観察された。前処置なしのFA患者で修正したHSCの生着の漸進的進行が見られたことは、生命を脅かすこの疾患に対して遺伝子治療が革新的な低毒性の治療選択肢となる可能性を裏付けている。

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