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脊索腫:脊索腫で見られるbrachyury転写因子依存性を小分子の標的とする

Nature Medicine 25, 2 doi: 10.1038/s41591-018-0312-3

脊索腫は、承認された治療法のない原発性骨肉腫である。脊索腫には治療標的となり得る体細胞変異がほとんど生じないため、この疾患での治療標的の特定は難問となっている。今回我々は、ゲノム規模でのCRISPR–Cas9スクリーニングと範囲を決めた詳細な小分子感受性プロファイリングを行い、脊索腫の治療標的となり得る依存性を見いだしたことを報告する。このような体系的手法により、発生に関わる転写因子T(brachyury;TBXT)が脊索腫の選択的必須遺伝子の最上位にあり、また、CDK7/12/13およびCDK9を標的とする転写性CDK(cyclin-dependent kinase)阻害剤が脊索腫細胞の増殖を強力に抑制することが明らかになった。他の種類のがんでは、高発現しているエンハンサー関連発がん性転写因子群が転写性CDK阻害剤により下方調節されることが観察されている。我々は、Tは脊索腫で「スーパーエンハンサー」を含む1.5Mbの領域に結合しており、最も高い発現を示すスーパーエンハンサー結合型転写因子であることを見いだした。転写性CDK阻害は、調べたモデルの全てで、細胞のbrachyuryタンパク質のレベルを選択的かつ濃度依存的に低下させた。さらにin vivoでは、CDK7/12/13阻害剤の投与は、腫瘍増殖を大幅に抑制した。まとめると以上の結果は、脊索腫でのbrachyury転写因子依存性を標的とする小分子を明らかにしており、この治療戦略の基盤となるT遺伝子の調節機構を突き止め、ゲノムの変異の少ないがんでの脆弱性の発見に体系的な遺伝学的・化学的スクリーニング手法を適用する際の基本的枠組を提示している。

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