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アルツハイマー病:血清中ニューロフィラメントの動態は発症前アルツハイマー病での神経変性と臨床的進行を予測する

Nature Medicine 25, 2 doi: 10.1038/s41591-018-0304-3

ニューロフィラメント軽鎖(NfL)は、脳のさまざまなプロテオパチーの病態進行に関する有望な液性バイオマーカーである。今回我々は、国際的な研究活動団体である優性遺伝性アルツハイマー・ネットワーク(DIAN)が持つ独自の特色を活かし、超高感度イムノアッセイ技術を用いて、脳脊髄液中(n = 187)と血清中(n = 405)のNfLレベルが互いに相関しており、家族性アルツハイマー病の発症前段階で上昇することを明らかにした。この上昇は血清NfLの動態の縦断的な個人内変動解析(n = 196)によって確認され、さらに血清NfLの変化速度によって変異保持者かどうかを、横断的な絶対的NfLレベルよりも10年近く早く判別できることも明らかになった(横断解析では、判別可能となるのは症状出現が推定される6.8年前なのに対して、縦断解析では16.2年前)。血清NfLの変化速度は、発症前の段階から発症段階へと移りつつある被験者で最大になり、磁気共鳴画像化法(MRI)で評価される皮質菲薄化と関連するが、陽電子放射断層撮影法(PET)により評価されるアミロイドβ沈着やグルコース代謝とはあまり関係が見られない。血清NfLは、皮質菲薄化の速度と、ミニメンタルステート検査(MMSE)や論理的記憶検査で評価される認知機能変化も予測した。従って、血清中NfL動態は、家族性アルツハイマー病発症前段階の早期に病気の進行や脳の神経変性を予測するので、臨床的に有用なバイオマーカーとなる可能性が裏付けられた。

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