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CRISPR–Cas9:ヒト成人集団内には化膿性連鎖球菌Cas9反応性T細胞が広く存在する

Nature Medicine 25, 2 doi: 10.1038/s41591-018-0204-6

化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)由来の非常に効率の良い部位特異的ヌクレアーゼシステムであるCRISPR–Cas9の発見は、遺伝子治療の分野を活気付けた。Cas9ヌクレアーゼの免疫原性はマウスで実証されている。治療用遺伝子ベクターやそれが運搬する積み荷に対する既存の免疫は、根治的と考えられている治療の有効性を低減し、安全性に関する深刻な問題を引き起こす可能性がある。S. pyogenesはヒトでの感染症のありふれた原因だが、これがCas9ヌクレアーゼに対するT細胞記憶を誘導するかどうかは明らかになっていない。今回我々は、S. pyogenes由来の最も広く使われているCas9ホモログ(SpCas9)に対して誘導された既存のエフェクターT細胞応答が健常人に広く存在することを示す。我々はさらに、CD4/CD8分画中のSpCas9反応性T細胞の多重エフェクター能、細胞傷害性、および系列決定について調べた。SpCas9反応性T細胞の詳細な解析から、SpCas9反応性エフェクターT細胞の増殖と機能をin vitroで低減させ得るSpCas9反応性制御性T細胞の頻度の高さが明らかになった。この結果は、CRISPR関連ヌクレアーゼに対してT細胞が仲介する免疫の一端を明らかにしたもので、既存の免疫という問題を克服するための実現可能な解決法を提示している。

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