Editorial

食品産業の健康への影響という問題を解きほぐす

Nature Medicine 25, 11 doi: 10.1038/s41591-019-0661-6

ここ数十年間で、心疾患、糖尿病、それに肥満から生じる合併症の罹患率は非常な勢いで上昇している。Nature Medicine 11月号では、Nature Metabolism と連携して、心血管代謝疾患の世界的な罹患率上昇について特集を組み、脂肪性肝疾患から経済的因子と心血管代謝疾患の間の関係まで、さまざまな問題を取り上げて論じることにした。

掲載されている記事・論文は、このような疾患増加の根底にある要因について、知られていることとまだ分からないことをはっきりさせ、こうした要因についての理解を進め、現在の増加傾向を変えるために何をなすべきかを論じている。こうした傾向に関するこれまでの解析では、心血管代謝疾患の原因となった個人的な選択が主として取り上げられてきたが、最近ではこうした増加傾向を抑えるための社会的責任について論じられることが次第に多くなってきた。

心血管代謝疾患は、超加工食品やアルコールの消費、また運動のレベルと深く結び付いている。超加工食品の多くは炭水化物含量が特に多く、炭水化物摂取量の増加は18の低中収入国および高収入国にわたって、有病率の上昇と関連していることが明らかになっている。最近の研究では、超加工食品の消費がカロリー摂取増加と体重増加に結び付いていることが示された。体重増加は心血管代謝疾患のリスク因子の1つである。そして、食品産業はこの種の食品の売り上げ促進にあの手この手の策略を弄しており、ワクチン接種への資金援助、公衆衛生キャンペーンへの協力、非営利団体の設立などを行って企業のイメージを向上させ、製品に対する懸念の払拭に努めている。

政府や関係者は、健康に悪い製品のプロモーションに厳重な制限を課し、適切な販売が行われるように監視しなければいけない。それと同時に、規制担当省庁が健康のためのガイドラインやポリシーを作り出す際に重要なのは、策定に関わる人々について、どんなものであれ利益相反があるかどうかを熟慮することである。商業的決定因子は長らく、健康に大きな影響を及ぼし続けてきた。新たな規制を策定し、その影響を解明することは、商業的要因の健康への負の影響に対する理解を深め、最終的には悪影響の防止につながるだろう。

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