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がん治療:CLCF1–CNTFRシグナル伝達を標的とした改変デコイ受容体の肺腺がんでの抗腫瘍活性

Nature Medicine 25, 11 doi: 10.1038/s41591-019-0612-2

腫瘍微小環境中の炎症誘発性サイトカインは腫瘍増殖を促進することがあるが、治療標的としてのこれらの価値はまだ十分に調べられていない。我々は、肺腺がん(LUAD)でのCLCF1(cardiotrophin-like cytokine factor 1)–CNTFR(ciliary neurotrophic factor receptor)シグナル伝達軸の機能的重要性を評価し、高親和性で可溶性の受容体eCNTFR–Fcを作出した。これはCLCF1を隔離して、その発がん性の作用を阻害する。eCNTFR-Fcは、多数の異種移植モデルや、LUADの自所性で悪性度の高い遺伝子改変マウスモデル(発がん性Krasの活性化やTrp53欠損によって促進される)で腫瘍増殖を阻害した。eCNTFR-Fcを介するCLCF1阻害は、発がん性KRASによって誘導される腫瘍で最も効果的であるように見える。eCNTFR–Fcの有効性とKRAS変異(グアノシン三リン酸を加水分解する本来的な活能は保持する)の存在の間には相関が見られ、このことは作用機序がグアノシン三リン酸結合異常と関係している可能性を示唆している。まとめると今回の結果は、CLCF1–CNTFRシグナル伝達の遮断は、LUAD、それにおそらくは腫瘍微小環境中にCLCF1が存在する他の種類の腫瘍に対する新規な治療法となることを示している。

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