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糖尿病:アディプシンは糖尿病マウスではベータ細胞を維持し、ヒトでは2型糖尿病からの保護に関連付けられる

Nature Medicine 25, 11 doi: 10.1038/s41591-019-0610-4

2型糖尿病は、インスリン抵抗性と膵ベータ細胞の量および機能の段階的喪失を特徴とする。今のところ、ベータ細胞喪失を防ぐことが実証されている治療法はなく、インスリン分泌刺激物質のような一部の治療法はベータ細胞不全を加速するとされて2型糖尿病での使用が制限されている。アディポカインであるアディプシン(別名、補体D因子)は、補体副経路と補体成分C3aの生成を制御し、C3aはベータ細胞のインスリン分泌を増加させるように働く。本論文では、アディプシンの慢性的な補充が、他のインスリン分泌刺激物質とは対照的に、糖尿病のdb/dbマウスで高血糖症を軽減し、ベータ細胞の脱分化と細胞死を阻害することでこの細胞を維持しながら、インスリンレベルを上昇させることを示す。機構としては、アディプシン/C3aはホスファターゼDusp26を低減させることが分かった。ベータ細胞でDusp26を強制的に発現させると、ベータ細胞アイデンティティーに関係する主要な遺伝子の発現が低下し、細胞死に対する感受性が高まる。対照的に、DUSP26を薬理学的に阻害すると、糖尿病マウスでは高血糖症が改善され、ヒト膵島細胞は細胞死から保護される。ヒトの健康に関連しては、より高い血中アディプシン濃度は、中高年成人でボディマス指数(BMI)を補正した後の低い将来的糖尿病発症リスクと有意に関連することが分かった。まとめると、これらのデータはアディプシン/C3aとDUSP26を指向する治療法は、2型糖尿病の治療と予防のために健全なベータ細胞を生成させるという新規な手法となると考えられる。

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