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顧みられない疾病への取り組みを萎えさせる気候変動

Nature Medicine 25, 11 doi: 10.1038/s41591-019-0514-3

WHOの「顧みられない熱帯病」対策ロードマップでは、2020年までに17種類の熱帯病を抑制し撲滅することが計画されている。しかし気候変動は、こうした計画にも大きな影響を及ぼしそうだ。温暖化傾向は世界的に続いており、そのため熱帯病を媒介する動物の生息域も変化すると予想されている。世界の一部地域だけでの気温上昇であっても、媒介動物に遺伝的選択圧がかかる可能性があり、媒介動物の進化が加速するかもしれない。顧みられない熱帯病の全球規模での監視は限定的であり、その限られたデータでは、このような病気をとりまく環境が温暖化に伴ってどのように変化するかを正確に把握することは難しい。デング熱を媒介する蚊や住血吸虫症の原因となる寄生虫を運ぶ巻き貝などの分布域や増殖動態が今後どうなるか、予測は困難だが、これまでの計画をスケールアップするだけでは不十分なことは明らかである。

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