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ゴールデンエイジをブルーにさせない

Nature Medicine 24, 9 doi: 10.1038/s41591-018-0174-8

65歳以上の人口比率は今後数十年で急激に増加すると予測されており、加齢に関連する疾患は高齢化社会で公衆衛生上の大きな懸念となると考えられている。老年期うつ病と認知機能低下は高齢者の能力障害の主要な原因であり、医療制度にとってすでにかなりの経済的負担となっている。老年精神医学では、高齢になってから発症するタイプのうつ病と認知機能低下の関係に新たに関心が集まっていて、高齢者のうつ病に関わる神経システムと、認知機能低下に関わるシステムとの重複について調べる研究が続けられている。ごく最近発表された研究では、高齢者のうつ病が、認知的自己制御に関わる複数の脳領域間の相互作用の破壊と連動していることが報告された。さらに、こうした研究に基づいて、薬剤開発や治療方法も新たな方向に動きつつあり、従来の抗うつ薬とは異なる新しい治療標的の探索に加えて、既存薬を転用する臨床試験も行われている。また、ビデオゲームが高齢者の気分を改善することも報告され、運動や質の高い睡眠に加えて、うつ病防止に役立つと考えられるようになった。「うつ病は老化の一部である」という考え方は、研究者たちの努力によって否定されつつあるようだ。

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