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糖尿病:メトホルミンはin vivoで酸化還元依存的機構により糖新生を阻害する

Nature Medicine 24, 9 doi: 10.1038/s41591-018-0125-4

メトホルミンは2型糖尿病に対する世界共通の第一選択治療薬で、肝臓での糖新生の阻害によりグルコースを低下させる治療効果がある。このビグアナイドの分子レベルでの主要な作用機構はよく分かっていないが、その作用は、少なくとも部分的には、ミトコンドリア複合体Iの阻害によるものと考えられている。我々は今回、覚醒状態の健常ラットおよび糖尿病ラットで血漿メトホルミン濃度を、急性静脈内投与、急性門脈内投与、あるいは慢性経口投与により臨床で観察される程度にすると、乳酸やグリセロールからの糖新生は阻害されるが、ピルビン酸やアラニンからの糖新生は阻害されないことを明らかにした。これらの結果は、メトホルミンが抗高血糖効果を発揮する際には細胞質の酸化還元状態に対応する値が上昇することを示している。このような影響の全てが複合体Iの阻害とは無関係に起こることが、肝臓のエネルギー充填やクエン酸シンターゼフラックスが変化しないことによって証明された。in vivoでは、細胞質の酸化還元状態とは無関係に糖新生に寄与する基質、あるいはメチレンブルーを注入することで細胞質の酸化還元状態を正常化すると、メトホルミンによる糖新生阻害が見られなくなった。さらに、構成的に活性なアセチルCoAカルボキシラーゼを発現するマウスでは、メトホルミンは肝臓のグルコース産生を迅速に減少させ、肝細胞の細胞質の酸化還元状態に対応する値が上昇するが、肝臓のトリグリセリド含量あるいは糖新生酵素の発現に変化はなかった。これらの結果は、メトホルミンは臨床で使用した場合と同じ血漿濃度で、酸化還元状態に依存する様式で肝臓の糖新生を阻害し、これはクエン酸シンターゼフラックスの低下、肝臓のヌクレオチド濃度の低下、アセチルCoAカルボキシラーゼ活性の低下、あるいは糖新生酵素タンパク質の発現低下とは無関係であることを実証している。

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