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肺繊維症:タンパク質酸化の低下は肺繊維症を回復させる

Nature Medicine 24, 8 doi: 10.1038/s41591-018-0090-y

特発性肺繊維症は、肺での過剰なコラーゲン沈着を特徴とし、ガス交換の慢性的障害と死亡につながる。この疾患の発症には酸化ストレスが重要であると考えられているが、その正確な機序は解明されていない。S-グルタチオン化(PSSG)はタンパク質の翻訳後修飾の1つで、この修飾はグルタレドキシン-1(GLRX)によって解消できる。GLRXとPSSGが肺繊維症に関わっているかどうかは分かっていない。本論文では、特発性肺繊維症患者由来の肺組織とトランスジェニックマウスモデル、そして繊維形成がすでに起こっているマウスの気道に組換えGlrxを直接投与する方法を用いて、GLRXおよびPSSGの状態が肺繊維症の発症機序に及ぼす影響を調べた。GLRXの酵素活性は、繊維化の見られる肺では大きく低下しており、それと合わせてPSSGが増加していた。Glrxを欠損するマウスは、ブレオマイシン、あるいは活性型トランスフォーミング増殖因子β1をコードするアデノウイルス(AdTGFB1)によって誘導される肺繊維症に対するに感受性が上昇していたが、肺上皮へGlrx遺伝子を導入し過剰発現させると、繊維化が軽減された。また、内在性のGLRXが酸化機構を介して不活性化されることや、気道へのGlrxタンパク質の直接投与はGlrxの活性を増強して、TGFB1あるいはブレオマイシンによって繊維症が誘発されたマウスでのコラーゲン増加が解消されること、このような影響は加齢により繊維化の進んだマウスへの投与でも見られることが分かった。まとめるとこれらの知見は、肺繊維症の治療に外因性GLRXが役立つ可能性を示唆している。

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