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がん:乳がんT細胞の単一細胞プロファイリングから明らかになった、予後改善と関連する組織常在型記憶細胞サブセット

Nature Medicine 24, 7 doi: 10.1038/s41591-018-0078-7

乳がん内の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の数は、患者の生存改善に対するロバストな予測因子であり、トリプルネガティブサブタイプおよびHER2を過剰発現するサブタイプで特に重要である。T細胞は主要なTIL集団に属しているが、T細胞亜集団内での量的および質的な違いと、患者の予後との関連性は不明である。我々は、ヒト乳がんから単離したT細胞6311個について、単一細胞RNA塩基配列解読(scRNA-seq)を行い、浸潤しているT細胞集団にはかなりの不均一性があることを明らかにした。多数のTILが見られる乳がんは、組織常在型記憶T(TRM)細胞に分化する特徴を持つCD8+ T細胞を含んでおり、このようなCD8+ TRM細胞は、免疫チェックポイント分子やエフェクタータンパク質の発現レベルが高いことが分かった。scRNA-seqのデータから明らかになったCD8+ TRMの遺伝子シグネチャーは、初期段階のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の生存改善と有意な関連があり、予後診断の精度はCD8発現単独の場合よりも高かった。我々のデータは、CD8+ TRM細胞が乳がんの免疫監視に関与しており、免疫チェックポイント阻害による調節の重要な標的であることを示唆している。CD8+ TRM細胞の発生、維持、および調節の解明を進めることは、乳がん免疫療法の開発を成功させる上で重要になるだろう。

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