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がん治療:黒色腫で見られるeIF4F–STAT1–PD-L1軸を介した腫瘍免疫回避の翻訳制御

Nature Medicine 24, 12 doi: 10.1038/s41591-018-0217-1

腫瘍細胞の免疫回避を、例えばPD-L1(programmed death ligand-1)とPD-1(programmed death-1)受容体の間の相互作用のような阻害的チェックポイント阻害によって防止するのは、がんに対抗する強力な手法である。しかし実際には、このようなチェックポイント阻害が奏功しない患者は多い。腫瘍でのPD-L1発現は、有効性を予測可能なバイオマーカーだが、発現調節は複雑な機構を介するものであって、まだ完全には解明されていない。今回我々は、真核生物翻訳開始複合体のeIF4F[メッセンジャーRNA(mRNA)の5′キャップに結合する]が、がん細胞表面でのインターフェロンγ誘導性PD-L1発現を、転写因子STAT1(signal transducer and activator of transcription 1)をコードするmRNAの翻訳調節によって制御していることを示す。eIF4F複合体の形成は、ヒト黒色腫での免疫療法への応答性と相関している。eIF4Fの構成因子であるRNAヘリカーゼeIF4Aを薬理学的に阻害すると、PD-L1の発現低下を介して、免疫を介した強力な抗腫瘍効果が誘導された。従って、抗がん剤として開発が進められているeIF4A阻害剤は、がんの免疫療法薬としても作用する可能性がある。

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