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腎疾患:慢性腎臓病での腎臓区画特異的な遺伝的多様性の解析によって明らかになった新たな経路

Nature Medicine 24, 11 doi: 10.1038/s41591-018-0194-4

慢性腎臓病(CKD)は、腎臓が老廃物を排除できなくなる病気で、世界中で7億人が罹患している。複数のゲノム規模関連解析(GWAS)によってCKDの塩基配列バリアントが見つかっているが、GWASのこのような結果の生物学的基盤は、まだほとんど分かっていない。我々はこの課題に取り組むために、ヒト腎臓の糸球体区画と尿細管区画について、発現量的形質座位(eQTL)アトラスを作製した。CKD GWASとeQTL、単一細胞RNA塩基配列解読、および調節領域のマップを統合することで、CKDに関わる新規の遺伝子が見つかった。原因遺伝子と推定されたものは、近位尿細管で多く発現され、エンドリソソーム機能に特に多く関わっていて、ここではTGF-β経路中のアダプタータンパク質であるDAB2が中心的なノードを形成している。マウスでの機能的実験により、腎臓尿細管でDab2の発現を低下させるとCKDが起こりにくくなることが確認された。つまり、区画特異的eQTL解析は、CKD発症に関わる新規の遺伝子や細胞経路を特定し、それによって新たな治療法候補を見いだすための重要な手法と言える。

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