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HIV:ウイルス血症患者におけるHIV-1広範囲中和抗体併用療法の安全性と抗ウイルス活性

Nature Medicine 24, 11 doi: 10.1038/s41591-018-0186-4

HIV-1感染に対して1種類の抗レトロウイルス剤を用いる単剤療法は、エラーを起こしやすいHIV-1の複製が薬剤抵抗性ウイルス変異株の産生につながるために、効果的でない。複数の薬剤の併用は長期にわたる制御を確立できることがあるが、抗レトロウイルス療法(ART)は毎日の投与が必要な上に副作用を引き起こす可能性があり、しかも感染が根絶されることはない。抗HIV-1抗体は、ARTに代わる治療法の候補となっているが、ウイルス血症患者の1種類の抗体による治療では、やはり抵抗性のウイルス変異株が出現する結果となる。さらに、第一世代抗HIV-1広範囲中和抗体(bNAb)の併用は、感染に対して検出できるほどの効果がなかった。今回我々は、2つの強力なbNAbである3BNC117および10-1074を組み合わせてHIV-1ウイルス血症患者7人に投与した第1b相臨床試験(NCT02825797)について報告する。各抗体の30 mg/kgの注射の忍容性は良好であった。2種類の抗体に感受性のウイルスを持つ4人に対する免疫療法では、1 ml当たり平均2.05 log10コピーのHIV-1ウイルス負荷減少が見られ、最大3回のうちの初回注射後の3か月間は大幅な減少が維持された。また、両方の抗体に対する抵抗性が生じた患者はいなかった。HIV-1ウイルス血症の軽減と抵抗性ウイルス変異株の出現抑制における抗体併用の効果を確認するためには、より大規模な研究が必要であろう。

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