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がん:EZH2はH3K27M変異型小児グリオーマの治療標的候補である

Nature Medicine 23, 4 doi: 10.1038/nm.4293

びまん性内在性橋グリオーマ(DIPG)は、橋にできる悪性の脳腫瘍であり、主に小児で発症する。DIPGはその80%近くでヒストンH3遺伝子に変異が生じており、リシン27がメチオニンへと置換されている(H3K27M)。H3K27Mは、H3リシン27のメチル化(H3K27me)を行う多タンパク質複合体PRC2(polycomb repressive complex 2)の触媒サブユニットEZH2に結合することで、PRC2を阻害する。H3K27M変異を持つDIPGでは広範囲にわたってH3K27me3が失われているが、H3K27me3を保持している遺伝子も複数見つかる。本研究では、H3K27Mが腫瘍形成を促進するDIPGマウスモデルについて報告する。我々はこのモデルと患者由来の初代DIPG細胞株を用い、H3K27Mを発現する腫瘍の増殖にはPRC2が必要であることを明らかにした。さらに、EZH2の小分子阻害剤が、腫瘍抑制タンパク質p16INK4Aの誘導に依存する機構を介して、腫瘍細胞増殖を阻害することも分かった。ゲノム規模のエンリッチメント解析により、H3K27M細胞でH3K27me3を維持している遺伝子群は、強いポリコーム標的であることが明らかになった。また、DIPGマウスモデルとH3K27Mを発現するヒトの初代DIPG細胞でH3K27me3を維持している遺伝子群は高度に重複していることが明らかになった。まとめると今回の結果は、残存するPRC2活性はH3K27Mを発現するDIPGの増殖に必要であり、EZH2の阻害はこのような腫瘍に対する治療戦略候補となることを示している。

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