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腎疾患:ヒトAPOL1リスクバリアントを遺伝子導入によりマウス足細胞で発現させると腎臓病が引き起こされる

Nature Medicine 23, 4 doi: 10.1038/nm.4287

アフリカ系米国人は慢性腎臓病と末期腎不全を発症するリスクが上昇しており、この関連はAPOL1遺伝子の2つのよく見られる遺伝的バリアント(G1およびG2)に主に起因すると考えられている。だが、これらのAPOL1リスク対立遺伝子が病因性であることを実証する直接の証拠はまだない。それはAPOL1遺伝子は霊長類の一部とヒトにしか存在しないからであり、従ってこれらのリスク対立遺伝子と腎臓病の間の因果関係を実験的に証明することは難しい。今回我々は、APOL1の参照対立遺伝子(G0)、あるいはリスクを与える対立遺伝子のどちらか(G1あるいはG2)を足細胞特異的に誘導性発現するマウスを作製した。APOL1リスク対立遺伝子のどちらかを足細胞特異的に発現するマウスでは、ヒト腎臓病に非常によく似た機能的変化(アルブミン尿および高窒素血症)、構造的変化(足突起の消失および糸球体硬化)、分子的変化(遺伝子発現)が見られたが、G0対立遺伝子を発現するマウスではこのような変化が見られなかった。疾患の発症は細胞種特異的で、可逆的であるらしく、また疾患の重症度はリスク対立遺伝子の発現レベルと相関していた。さらに、リスクバリアントAPOL1対立遺伝子の発現によりエンドソームのトラフィッキングが妨げられ、オートファジーによる輸送が阻止されて、これが最終的に炎症による足細胞死や糸球体の瘢痕化につながる。まとめると今回の結果は、APOL1リスク対立遺伝子の発現がin vivoでの足細胞機能の変化と糸球体の病変の原因であることを初めて実証したものである。

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