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繊維化:ADAM10によるエフリンB2のシェディングは筋繊維芽細胞の活性化と臓器の繊維化を促進する

Nature Medicine 23, 12 doi: 10.1038/nm.4419

慢性的な組織損傷に対する創傷治癒応答は、うまく適応していない場合に臓器の繊維化を引き起こす。繊維化は、細胞外マトリックス(ECM)の過剰な蓄積や活性化した筋繊維芽細胞による組織リモデリングを伴い、正常な組織構造や臓器機能の喪失につながる。しかし、筋繊維芽細胞活性化のメディエーターはまだ十分に明らかにされていない。今回我々は、可溶性のエフリンB2(sEphrin-B2)が、肺および皮膚の繊維化を促進する、これまで知られていなかったメディエーターであることを突き止めた。肺の損傷後に、繊維芽細胞では膜結合型エフリンB2の細胞外ドメインが切断され(エクトドメイン・シェディング)、繊維芽細胞から肺胞の気腔内に放出されることを示す分子的、機能的および前臨床的証拠が得られた。sEphrin-B2のシェディングは、繊維芽細胞の走化性行動と活性化を、EphB3やEphB4の受容体を介するシグナル伝達によって促進する。繊維芽細胞がエフリンB2を欠くマウスは皮膚や肺の繊維化が起こりにくく、また繊維芽細胞ではADAM10(a disintegrin and metalloproteinase 10)がエフリンB2に対する主要な切断酵素(シェダーゼ)であることが分かった。ADAM10発現はトランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1)によって増大し、ADAM10が仲介するsEphrin-B2産生にはTGF-β1が誘導する筋繊維芽細胞活性化が必要である。マウスでADAM10を薬理学的に阻害すると、気管支肺胞洗浄液中のsEphrin-B2量が減少し、肺繊維化が起こりにくくなる。マウスでのこれらのデータと一致して、特発性肺繊維症患者の繊維芽細胞では、ADAM10–sEphrin-B2シグナル伝達が亢進している。これらの結果は、組織繊維化の新規な分子機序を明らかにしており、sEphrin-B2とその受容体EphB3とEphB4、およびADAM10が繊維症治療における治療標的候補であることが確認された。

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