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白血病:N6メチルアデノシン(m6A)を形成する酵素METTL3は正常造血細胞と白血病細胞の骨髄細胞分化を制御する

Nature Medicine 23, 11 doi: 10.1038/nm.4416

N6メチルアデノシン(m6A)はmRNA中に多数見られるヌクレオチド修飾で、マウス胚性幹細胞の分化に必要とされる。しかし、m6A修飾が、正常または悪性の骨髄造血細胞の分化を制御するかどうかは分かっていない。本研究では、ヒト造血幹細胞/前駆細胞(HSPC)でm6Aを形成する酵素のMETTL3をshRNAにより枯渇させると、細胞分化が促進され、それに連動して細胞増殖が低下することを示す。逆に、野生型METTL3の過剰発現は細胞分化を抑制して細胞増殖を亢進させるが、触媒活性のないMETTL3ではこうした影響は見られない。METTL3 mRNAおよびMETTL3タンパク質は、急性骨髄性白血病(AML)細胞中で、健常なHSPCあるいは他の種類の腫瘍細胞よりずっと多く発現している。さらに、ヒト骨髄性白血病細胞株でMETTL3を枯渇させると、細胞分化とアポトーシスが誘導され、レシピエントマウスではin vivoで白血病の進行が遅くなった。m6Aの一塩基レベル分解能でのマッピングをリボソームプロファイリングと合わせて行ったところ、ヒト急性骨髄性白血病のMOLM-13細胞株では、m6Aがc-MYCBCL2およびPTEN mRNAの翻訳を促進することが明らかになった。また、METTL3の喪失はリン酸化AKTのレベルを上昇させ、これはMETTL3枯渇の分化促進作用に関わっている。まとめると今回の結果は、骨髄性白血病でMETTL3を治療標的とする際の論拠を示している。

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