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精神神経疾患:ヒト特異的なAS3MTアイソフォームとBORCS7は10q24.32の統合失調症関連座位中のリスク因子である

Nature Medicine 22, 6 doi: 10.1038/nm.4096

ゲノム規模の関連解析(GWAS)によって、精神疾患に関連する多数の一塩基多型(SNP)が見つかっているが、その分子機序については知られていない。本論文では、10q24.32の統合失調症関連座位に存在する複数の遺伝子に見られるリスク対立遺伝子が、ヒト脳でBORCS7(BLOC-1 related complex subunit 7)とAS3MT(これまで特性が調べられていなかったヒト特異的な亜ヒ酸メチルトランスフェラーゼ)のアイソフォーム(AS3MTd2d3)の両方の発現上昇に選択的に関連していることを示す。このアイソフォームは亜ヒ酸メチルトランスフェラーゼ活性を欠き、対照群よりも統合失調症患者の方に多く認められた。条件付け発現解析の結果から、BORCS7AS3MTd2d3シグナルはおおむね無関係であることが示唆された。GWASによりこのゲノム領域で見つかった複数のリスクSNPは、AS3MTの第1エキソン中のVNTR(variable number tandem repeat)多型と結びつけられる。このVNTR多型は、白人とアフリカ系アメリカ人に由来する試料の両方でAS3MTd2d3の発現と関連している。VTNRの遺伝子型から、ルシフェラーゼアッセイではプロモーター活性が、さらにAS3MT遺伝子内でのDNAメチル化が予測される。AS3MTd2d3BORCS7は共に、成人のニューロンおよびアストロサイトで発現しており、ヒト幹細胞が神経細胞運命へ分化する際に発現が増加した。今回の研究結果は、発生初期の脳に関わっていて精神疾患のリスクをもたらす新規で進化上最近出現したタンパク質などの、10q24.32遺伝子座が関連する重要な事象について分子レベルでの説明を与えるものだ。

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