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がん:FOXP3+CD4+ T細胞の2つの亜集団は大腸がんの予後に異なる影響を及ぼす

Nature Medicine 22, 6 doi: 10.1038/nm.4086

転写因子FOXP3(forkhead box P3)を発現するCD4+ T細胞は制御性T(Treg)細胞として機能し、がん細胞に対する有効な抗腫瘍免疫応答を抑制する。腫瘍へのTreg細胞の大量の浸潤は、さまざまな種類のがんで臨床転帰の不良に関連している。しかし、大腸がん(CRC)でのTreg細胞の役割については異論があり、一部の研究ではCRCでのFOXP3+ T細胞の浸潤が良好な予後を示すとされている。CRCでは抑制能を持つFOXP3hi Treg細胞による浸潤が広く見られる。今回我々は、また別の非抑制性FOXP3lo T細胞の浸潤の程度によってCRCを2つのタイプに分類できることを示す。非抑制性のFOXP3lo T細胞は、ナイーブT細胞マーカーのCD45RAを発現せず、FOXP3が不安定である点で免疫抑制能を持つFOXP3+ Treg細胞と区別され、炎症性サイトカインを分泌する。実際、FOXP3lo T細胞が大量に浸潤しているCRCは、FOXP3hi Treg細胞が主に浸潤しているCRCに比べて、かなり良好な予後を示した。このような炎症性FOXP3lo非Treg細胞の発生は、がん組織によるインターロイキン12(IL-12)とトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)の分泌に依存している可能性があり、これらの存在は腸内細菌(とりわけFusobacterium nucleatum)の腫瘍侵入と相関していた。従って、CRCの予後決定には、腫瘍浸潤性FOXP3+ T細胞の機能的に異なる亜集団が互いに相反する影響を及ぼしている。免疫抑制能を持ったFOXP3hi Treg細胞の腫瘍組織からの除去は、抗腫瘍免疫を増強する可能性があり、CRCなどのがんの有効な治療戦略として使用できると考えられるが、一方で免疫抑制能をもたないFOXP3lo非Treg細胞集団を局所的に増加させる戦略は腫瘍形成を抑制あるいは防止するのに使用できるかもしれない。

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