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がん:転移性前立腺がん男性患者の腫瘍ゲノムにはかなりの多様性が見られるが、個々の腫瘍内でのゲノム多様性は限られている

Nature Medicine 22, 4 doi: 10.1038/nm.4053

腫瘍の不均一性は、転移したがんに対する全身的な分子標的治療の有効性を低下させる可能性がある。我々は、患者の単一の転移巣に見られるゲノム変化から、体内に分散している他の転移巣の重要な発がんドライバーを適正に評価できるかどうかを決定するために、播種性前立腺がんの複数の男性患者に由来する多数の腫瘍について、全エキソーム塩基配列解読、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、RNA転写産物プロファイリングを使って解析を行い、患者個人の腫瘍間および複数の患者中に見られるゲノム多様性を比較した。患者間でかなりの不均一性が見られるのとは対照的に、個人体内の転移腫瘍間の多様性は限られていて、体細胞変異の数、ゲノムのコピー数変化の負荷、既知の発がんトライバーの異常は全て一致度が高く、また、アンドロゲン受容体(AR)活性や細胞周期活性を評価する指標も一致していた。AR活性は細胞増殖と逆相関していたが、ファンコニ貧血(FA)複合体遺伝子群の発現は細胞周期進行の亢進、E2F1(E2F transcription factor 1)の発現、RB1(retinoblastoma 1)の喪失と相関していた。FA複合体遺伝子群あるいはATM(ATM serine/threonine kinase)に体細胞変化が生じている患者は、DNA修復タンパク質をコードする遺伝子群に異常のない男性患者に比べて、カルボプラチンに対する治療反応持続期間が大幅に長かった。まとめるとこれらのデータは、単一の転移腫瘍について評価を行えば(例外はあるにしても)、その患者の体内の播種性腫瘍中に存在する重要な発がんトライバー変化に対して適正な評価を与えることができ、従って、予測された分子的脆弱性を基盤として治療法を選択するのに役立つ可能性があることを示している。

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