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幹細胞:ABT263による老化細胞の除去はマウスの老化した造血幹細胞群を若返らせる

Nature Medicine 22, 1 doi: 10.1038/nm.4010

老化細胞(senescent cell:SC)は、加齢に伴って、また放射線の全身照射(TBI)のような遺伝毒性ストレスを受けた後に蓄積する。早老のマウスモデルでの遺伝子導入手法を用いたSC除去は、複数の加齢関連障害の発生を遅延させるので、SCは老化に関連する一部の病変の原因となる役割を持つと考えられている。従って、SC選択的に細胞死を引き起こせる「老化細胞死誘導(senolytic)」薬は組織幹細胞群を若返らせ、健康寿命を延ばすことが期待される。この考えを検討するために、我々は化合物群のスクリーニングを行い、ABT263(抗アポトーシスタンパク質BCL-2およびBCL-xLの特異的阻害剤)が強力な老化細胞死誘導剤であることを突き止めた。ABT263は、アポトーシスを誘導することにより、細胞培養系で細胞のタイプや種類に関係なく、選択的にSCを殺すことが分かった。致死量以下の放射線照射を受けたマウス、あるいは正常に老化したマウスへのABT263の経口投与は、老化した骨髄造血幹細胞(HSC)や老化した筋幹細胞(MuSC)などのSCを効果的に枯渇させた。SCのこのような枯渇により、TBIによって誘発された造血系の早期老化が軽減され、正常に老化したマウスでは老化したHSC群やMuSC群の若返りが起こったことは重要である。我々の結果は、薬剤によるSCの選択的除去が、老化した組織の幹細胞の若返りなどを介して有益な結果をもたらすことを実証している。従って、老化細胞死誘導剤は、新規な放射線照射の影響を緩和し、また老化を防止する新規な種類の薬剤となる可能性がある。

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