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神経変性疾患:パーキンソン病に関連する変異型VPS35はDLP1複合体のリサイクルによりミトコンドリア機能障害を引き起こす

Nature Medicine 22, 1 doi: 10.1038/nm.3983

ミトコンドリア機能障害はパーキンソン病(PD)発症の際の非常に重要な段階であり、ミトコンドリア動態と品質制御の異常が機能障害の基盤となる機構として重要であることを示唆する証拠が増えてきている。VPS35遺伝子は、膜タンパク質のリサイクルに関与するレトロマー複合体の重要な構成要素をコードしていて、常染色体優性遺伝性PDに関連する3番目の遺伝子であることが明らかにされている。しかし、VPS35の変異が神経変性につながる仕組みは分かっていない。今回我々は、PDに関連するVPS35変異が、in vitroでは培養ニューロンで、in vivoではマウス黒質ニューロンで、またVPS35D620N変異を持つPD患者由来のヒト繊維芽細胞で、それぞれミトコンドリアの断片化と細胞死を引き起こすことを実証した。VPS35誘発性のミトコンドリア異常やニューロン機能障害はミトコンドリアの分裂の抑制により阻止できた。変異型VPS35ではDLP1(dynamin-like protein 1)との相互作用が増強されていて、これによってミトコンドリアDLP1複合体がミトコンドリア由来の小胞(mitochondria-derived vesicles)に依存する細胞内トラフィッキングを介してリソソームに運ばれて分解され、ミトコンドリアDLP1複合体のターンオーバーが亢進する。酸化ストレスがVPS35-DLP1の相互作用を増幅することは特に重要で、この相互作用増幅は、孤発性PD症例の脳でも見られることが分かった。これらの結果は、ミトコンドリアの分裂にVPS35が関与する新しい細胞内機構を明らかにしており、この機構の調節異常は家族性PD、そしておそらくは孤発性PDの発症機序にも関与していると考えられる。

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