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がん:ARID1Aに変異が生じているがんでEZH2メチルトランスフェラーゼ活性の標的化により誘導される合成致死

Nature Medicine 21, 3 doi: 10.1038/nm.3799

クロマチンリモデリング因子ARID1Aをコードしている遺伝子は、多種類のがんにわたって最も高い変異率が見られるものの1つである。特に、現時点で有効な治療法がない卵巣明細胞がんでは、その50%以上でARID1Aに変異が生じている。ARID1Aの変異状態に基づく標的がん療法で臨床応用できるものはこれまで報告されていない。本論文では、ARID1Aに変異が生じている卵巣がん細胞ではEZH2メチルトランスフェラーゼの阻害が合成致死的に働き、またARID1Aの変異状態はEZH2阻害剤に対する応答と相関していることを示す。PIK3IP1がARID1AとEZH2の直接の標的であり、EZH2の阻害によってPIK3IP1の発現量が上昇して、これがPI3K–AKTシグナル伝達を阻害した際に観察される合成致死に関わっていることを、我々は突き止めた。EZH2の阻害によって、in vivoARID1Aに変異が生じている卵巣腫瘍の退縮が起こったことは重要である。今回の結果は、ARID1Aに生じた変異とEZH2阻害とによる合成致死を実証した、我々の知る限りで初めてのデータである。今回のデータは、EZH2の薬理的阻害がARID1A変異を伴うがんに対する新規な治療戦略となることを示している。

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