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繊維化:オーファン核内受容体NR4A1はトランスフォーミング増殖因子βシグナル伝達と繊維化を制御する

Nature Medicine 21, 2 doi: 10.1038/nm.3777

間葉系応答は組織修復の重要な要素である。しかし、この修復過程が適切に終了されない場合は、繊維化と器官の機能不全が生じる。繊維化を停止させ組織恒常性を回復する治療法で、臨床で使用できるものはまだない。今回我々は、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)シグナル伝達の内因性阻害因子および抗繊維化治療の標的候補である核内受容体NR4A1の特徴を調べた。NR4A1は、SP1、SIN3A、CoREST、LSD1、HDAC1からなる抑制性複合体をTGF-βの標的である遺伝子に集合させ、TGF-βの繊維化誘導作用を制限する。生理的な創傷修復ではTGF-βの一過的な発現上昇がNR4A1の発現を誘導し、それによって負のフィードバックループが作られるが、繊維性疾患ではTGF-βシグナル伝達が持続的に活性化され、AKTと HDACに依存する機構を用いてNR4A1発現と活性化が阻害される。小分子のNR4A1アゴニストはこのような活性化型NR4A1の不足を回避して、マウスで実験的に誘導した皮膚、肺、肝臓、腎臓の繊維化を抑制する。今回の結果は、TGF-βシグナル伝達と繊維化にNR4A1が果たす調節因子としての役割を明らかにしており、繊維性疾患におけるNR4A1標的化という治療法に対する最初の証明となっている。

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